教育GP

教養研究センター特定研究

「身体知教育を通して行う教養言語力育成」


本取組は、社会の先導者に必要な言語力実体験を通してリーダーシップスキルと合わせて育成されなければいけないという考えの下、慶應義塾大学で教養研究センターを中心として開発した身体知教育(身体的気づきを導く体験型授業)のノウハウを活用して、芸術、フィールドアクティヴィティ、コミュニティ作り、コミュニケーション、本・雑誌作りなどの体験型授業によって、優秀な大学生にふさわしい言葉の力=教養言語力を習得させる教育モデルを提示かつ実施するものである。

 

 慶應義塾の重要な教育方針として「語力」教育があり、それは「日本語、外国語を含めて、言葉を明確に運用する思考力を身につけるための教育」と定義される。その一端は外国語教育によって担われるが、と同時に、上の語力教育の定義から明らかなのは、外国語教育に特化しない形の、思考力育成とも結びついた一般的言語能力開発の企てが行われない限り、語力教育は不十分だという事実である。今回の取組は、「語力」教育のその部分(思考力開発とリンクした全般的言語力の育成)の実現を目指すものである。

 

 これまで、慶應義塾大学では学部や研究所設置の少人数クラスで基礎「語力」の育成を行ってきた。だが、社会のリーダーたるにふさわしい言語力はそれでは不十分である。本取組では基礎の上の中上級レベルの言語力を教養言語力と名づけて、これを社会で必要とされる3つの言語力――学術言語力(選んだテーマを十分に調査して論文にまとめる力)、芸術言語力(言語を創造的に駆使する力)、メディア言語力(社会に発信する力)――に分け、相互に関連させつつ初年次よりトップクラスの言語力の育成を目指す。

 

 本取組では、社会のリーダーに必要なのは創造力協働力、そして自己システムを知ることと社会システムを知ることであるという認識の下、5つのセクションに分け、その内4つをこれらの能力と知をバランスよく獲得するために、残る1つを発信・評価・システムデザインに当てて、相互に関連する全5セクションの身体知教育(身体的気づきを導く体験型授業)を通して総合的な言語力を育成するプログラムの開発を目指す。

 

(1)セクションI「アート」:芸術(文学、演劇、古典、音楽)を通して主に自己についての授業を行い、創造力開発とともに、芸術・学術言語力の育成を目指す。 

 

(2)セクションII「フィールドアクティヴィティ」:フィールド活動を通して主に社会についての授業を行い、協働力開発とともに、学術・メディア言語力の育成を目指す。 

 

(3)セクションIII「コミュニティ」:コミュニティ作りを通して主に社会についての授業を行い、創造力開発とともに、メディア・芸術言語力の育成を目指す。

 

(4)セクションIV「コミュニケーション」:コミュニケーション学習を通して主に自己についての授業を行い、協働力開発とともに、学術・芸術言語力育成を目指す。 

 

(5)セクションV「発信・評価・システムデザイン」:雑誌作り・本作りなどの発信編集スキルを授業で学習し、セクションからIVまでの成果を統合的・戦略的に発信する。と同時に、「身体・言語・文化デザイン研究会」を発足し、評価方法も含めて本取組の成果を社会に発信・還元する新しいシステムのデザインを行う。

 

以上の取組を基礎として、社会のリーダーたるにふさわしい身体知に基づいた言語力を育成するカリキュラムを本学に構築・定着させ、その成果を国内外に広く発信する。